1.沖縄県内で確認された稀な鳥類の記録
(3)沖縄県内新分布記録種
1)ハイイロペリカン Pelecanus crispus [Dalmatian
Pelican]
ペリカン目ペリカン科 Pelecanidae
本種はこの数年間に県内で複数の観察記録が得られている。那覇市在住の渡久地政武氏によって1997年1月に沖縄島浦添市牧港で1個体、著者の一人である金城道男によって1998年1月に沖縄島中部の与那城町照間で1個体、同年2月に鳥景会の伊礼新治氏によって沖縄島中部の読谷村長浜ダムで1個体が観察された。その後同年3月9日には石垣島のアンパルで川勝敏雄氏により1個体が発見され、3月14日まで観察された。この個体は西村直人氏、古屋篤史氏及び佐藤進氏によって写真、ビデオ撮影されている(川勝・西村・古屋・佐藤各氏私信)。その後、1999年12月7日に与那国中学校の多和田眞修氏によって与那国島の久部良ミト(図1)で1個体が目撃、撮影されており(写真10)、同一個体と思われるものが2000年1月1日に石垣島磯部川河口で観察され、同3日には石垣ダムで写真撮影された(小山慎司氏私信 2000)。同個体は同月11日にもアンパルで見つかっているという(琉球新報 2000年1月13日付記事)。一方、宮古群島の伊良部島でも2000年1月8日に1個体の飛来が宮古野鳥の会によって確認されたが、同個体はその後同月11日に伊良部島佐和田の浜で確認された。しかし、同月12日に動けなくなったところを宮古野鳥の会会員によって傷病鳥として保護され、(財)沖縄こどもの国に輸送されたが、到着時にはすでに死亡していた。こどもの国では直ちに各部位の計測を行い、1月14日に死因解明のため解剖に付された。
表3に各部位の計測値と主要な解剖所見を示した。この所見の結果から、採食は死亡前2日から3日は行われておらず、消化管にも異物は検出されないことから、直接の死因は心嚢内に液体が貯留(心内膜炎)による心不全と考えられた。また、心内膜炎は滲出液の細菌検査でも細菌や真菌の検出されなかったことにより非細菌性心内膜炎と診断された。
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表3.ハイイロペリカン Pelecanus crispus [Dalmatian Pelican]の計測値(単位:mm)と解剖所見 |
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Measurements |
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ふしょ長 |
露 出 嘴 峰 長 |
自 然 翼 長 |
尾 長 |
全 長 |
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Length
of tarsus |
Length
of culmen |
Length
of Wing |
Length
of tail |
Total
Length |
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115 |
425 |
740 |
250 |
1810 |
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体 重 |
翼開長 |
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Body
Weight |
Wing
Width |
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7.56kg |
2520 |
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<主要解剖所見> |
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性別:雄 |
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心嚢内に透明黄褐色の液体充満(心内膜炎)し、貯留液にはフィブリン析出 (炎症反応)を呈する。肝臓は鬱血し、やや硬度あり。左後し第3指先端関節部より離断し化膿及び壊死(やや慢性所見)。左後し第2、3指間の水かき破れ化膿及び壊死。胃内容物空虚、腸管内容もごく少量で腸管鬱血。 |
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なお、同個体の標本は平良市総合博物館に剥製として保存される予定とのことである(沖縄タイムス 2000年1月13日付記事)。
本種は県内では迷鳥として飛来し、これまで石垣島での古い記録が見られる(八重山野鳥の会 1983)。今回の記録は近年の記録として貴重であり、沖縄島と与那国島での記録は本種の新たな分布記録となる。
なお、本種は1998年3月の石垣島での記録以来、1999年4月まで日本列島の各地でほぼ連続的に観察されたが、それらが全て同一個体であったか否かはわかっていない。なお、参考として同時期の国内における記録を付記する(福田篤徳氏私信 2000年)。
鹿児島県別府川河口 1998年3月中旬
佐賀県大授搦 1998年4月5日
山口県阿知須干拓 1998年4月11日
山口県阿知須町土路石川河口 1998年4月12日
島根県宍道湖 1998年4月19〜26日
富山県常願寺川大日橋 1998年10月17日
石川県河北潟 1998年10月25日
石川県七尾西湾 1998年10日26〜11月12日
新潟県鳥屋野潟 1998年11月20日
茨城県涸沼 1998年11月26日〜12月6日
静岡県富士川河口 1998年12月5日〜30日
茨城県涸沼 1999年1月1日〜4月6日(この間、千葉県小櫃川河口で1999年2月4日の記録有り)
2) コハクチョウ Cygnus columbianus jankowskii
[Tundra Swan]
カモ目カモ科 Anatidae
与那国島の久部良ミト(図1)で、1999年12月7日に与那国中学校の多和田眞修氏によって1個体が観察されている(写真11)。本個体は亜成鳥で野外識別の面でオオハクチョウと酷似しているため、当初はオオハクチョウC. cygnusとされていたが、体色が全体に白色がかり、首もやや短めであることから本種と判断された。
本種は迷鳥として県内各地に飛来してくるものと考えられ、県内における観察記録については、1976年12月に名護市(友利 1977)と石垣島(八重山野鳥の会 1983)での記録が見られる。また、沖縄野鳥研究会(1986)は、確認日付が不明ながら、伊是名島、北大東島、小浜島の3島での記録を示している。最近では1993年12月に沖縄島の浦添市で1個体と沖縄市で2個体が観察されている(嵩原 1994)。したがって、与那国島における本種の確認記録は報告されていないので、同島初記録となる。
3)アオシギ Gallinago solitaria japonica [Solitary Snipe]
チドリ目シギ科 Scolopacidae
1999年10月31日に(株)久米製糖の嘉手苅初子氏によって、久米島仲里村立仲里中学校裏手にある水路(図1)で、採餌中の1個体が写真撮影された(写真12)。
本種の県内における生息状況は、稀な旅鳥や冬鳥として飛来してくるものと思われるが、これまでの観察記録は、1993年10月10日に粟国島で捕獲標識され(山階鳥類研究所 1993)、また、1996年1月5日に沖縄島北部の大宜味村喜如嘉において、筆者のうちの金城道男及び渡久地によって観察と写真撮影がされている。したがって、今回の久米島における観察記録が同島での初記録になるものと思われる。
4)ヤイロチョウ Pitta
brachyra [Fairy Pitta]
スズメ目ヤイロチョウ科 Pittidae
本種は1997年9月5日に沖縄島南部の那覇市古波蔵にある那覇市漫湖公園の県道路上(図1)で弊死体として拾得され、沖縄県文化課によりの剥製標本が作製された。その後同標本は1999年4月に沖縄県立博物館に寄託された完全剥製標本である(写真13)。
本種は国内では局所的に渡来する夏鳥として、九州や四国、本州の山地森林地域で繁殖している。しかしながら、県内では迷鳥もしくは稀な旅鳥として飛来(通過)するものと考えられ、1979年7月15日に名護市屋我地で玉城克彦氏による1例の観察例がある(嵩原 1990)が証拠となる写真はなかった。おそらく、今回の記録が県内における2例目の記録であり、物証となる初めてのものである。なお、表4に各部位の計測値を示して種同定の参考とした。
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表4.ヤイロチョウPitta
nymphaの計測値(単位:mm) |
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Measurements |
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ふしょ長 |
露 出 嘴 峰 長 |
自 然 翼 長 |
尾 長 |
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Length
of tarsus |
Length
of culmen |
Length
of Wing |
Length
of tail |
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38.3 |
25.5 |
126 |
42 |
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(備考:標本計測) |
5)クロジョウビタキ Phoenicurus
ochruros rufiventris [Black Rrdstart]
スズメ目ツグミ科 Turdidae
1999年3月24日の朝9時20分頃、久米島仲里村比嘉にある仲里村役場前中庭で(図1)、植栽のわきの芝地や草地に降り立ち、餌をついばんでいる雄1個体が確認された(写真14)。 本種は大きさ約14cmの小形ツグミ類で、中国西部・チベット・ネパール・シッキム(以上が今回確認された亜種の生息分布)に生息し、その仲間はバイカル西部からアルタイ・ヒマラヤ西部・パキスタン・アフガニスタン・イラン・イラク・ヨーロッパ中部以西一帯・アフリカ北部などに広く繁殖分布する(黒田 1980)。また、朝鮮半島や台湾などにおいて迷鳥として飛来することがある(王ら 1991)。
本種の日本における初記録は、1984年4月15日に石川県舳倉島での記録とされ、その後1985年4月29日から30日にかけて山口県見島、1986年29日から30日に北海道知床半島、1987年3月と1988年1月から3月に埼玉県浦和市で確認記録が見られる(Brazil 1991)。その後、1995年1月8日に千葉県取手市や1996年4月21日には石川県輪島市舳倉島で写真撮影されているなど国内の観察記録は多い(亀谷辰郎氏私信 1999)。
県内では1996年4月6日に西表島で雄1個体が初確認されている(庄山 1997)。今回の確認は県内2例目となるが、沖縄諸島では初めての記録と思われる。
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Last modified: September 07, 2000.
IKENAGA, Hiroshi, ikecho@mail1.accsnet.ne.jp