ラブラドール・レトリーバーとは


(1)全般的紹介
 ラブラドール・レトリーバーは、世界で最も人気のある犬種のひとつです。米国や英国においては、このところ登録数は常に一位が続いています。日本では、長い間ペットショップから無視されたのが原因で登録数が少なかったのですが、最近その良さが理解されてきたため、急激な勢いで増えてきました。ジャパンケネルクラブの集計によれば、1998年度以降の登録数は、全犬種の中で4位程度にまでなっています。有名人の中では、タレントの木村拓哉さんやアメリカのクリントン元大統領がラブラドールを飼っていることが知られています。
 ラブは元々カナダのラブラドール半島やニューファンドランド島近辺にいた水猟犬をイギリス人が連れて帰り、イギリスで改良され1904年にスタンダードが確立した犬です。あのどでかいニューファンドランドという犬とは元が近いということです。レトリーバーとは英語の「retrieve(回収する)」から来ており、猟師が打ち落とした獲物を回収する作業を行う回収犬を意味します。レトリーバーの仲間には、日本でも人気のあるゴールデン・レトリーバーやフラットコーテッド・レトリーバーなどがおり、性格が似ています。

(2)外見
 ラブは一見ごく普通の犬です。短毛であって豪華な毛皮をまとっているわけではなく、これといった大きな特徴もありません。強いて体の特徴といえば、オッターテイルと呼ばれるかわうそのような太いまっすぐな尻尾と垂れ耳くらいでしょうか。色は、元々は黒のみだったのですが、その後イエロー(といっても白から茶色)が出現しました。数は少ないですが、チョコレート色のラブもいます。このような地味な外見から、ドッグショーでは、BIS(ベストインショー:そのショーで最も優秀であると認められた犬)にはほとんどなることがないようです。なお、大きさは、大型犬の部類に入りますので、成犬になると25-40kgにもなります。

(3)性格
 ごく普通の犬であるラブが人気がある理由はその性格にあります。実際に一緒に暮らしていてこれほど魅力的な犬種は他にはないのではと思えるほどです。まず、人間に対して攻撃的な点は全くなく、常にフレンドリーで優しい性格です。食べている途中でフードを取りあげても絶対に怒りません。泥棒が入ってきても性格によってはしっぽを振って喜ぶくらいですから、番犬には向きません。現に、ラブを室内で飼っているにも拘わらず泥棒に2回も入られた家もあります。もっとも警戒して吠えることはありますので、番犬に絶対にならないというわけではありません。ラブはいつも人間を慕い、人間を気にしながら生きているようなところがあります。人間と一緒に過ごすことを特に喜びます。帰宅したときの喜びようはそれは大変なものですし、相手にして遊べばものすごく楽しいです。まさに理想的な家庭犬といえるでしょう。ラブは、今、盲導犬(日本盲導犬協会中部盲導犬協会など)、介助犬(介助犬を育てる会)、警察犬、災害救助犬、麻薬探知犬(成田税関)などとして大活躍しています。これらはもともとシェパードの独壇場だったのですが、最近はラブがかなり増えてきています。この理由は、ラブが従順で訓練しやすいためと考えられます。特に盲導犬では、優しい外見から、最近ではほとんどラブが主流となっています。

(4)飼い方
飼う場所
 ラブはこのように魅力的な犬ですが、その良さを味わおうとするならそれなりに人間も努力が必要です。まず、是非とも室内で一緒に暮らしてあげて下さい(ウイズドッグ)。昔はこのような大型犬を室内で飼うことは考えられませんでしたが、ラブに関しては、間違っても外で鎖につないで飼わないで下さい。いくら広い庭があってもどんなに立派な犬小屋を与えても、放置しておくことはストレスを与えます。ラブは肉体的なストレスには強いですが、精神的なストレスには弱いといわれています。めったに吠えない犬ですが、外でひとりぼっちで飼われているラブは結構吠えるようになります。ラブに一番ストレスを与えるのはひとりぼっちにさせておくことです。室内で人間と一緒に暮らせるなら、いくら狭い部屋でもラブも人間も幸せです。室内の場合でも、独身や共稼ぎなど昼間ほとんど誰もいなくなる家では飼うことはあまり勧められませんが、やむを得ずそのような形で飼われる場合は、休日や夜などを利用してできるだけコミュニケーションをとってあげて下さい。
散歩と運動
 ラブは、曲がりなりにも体力のある大型犬です。老人や子供には体力的に手がおえないことがよくあります。朝晩の散歩では結構運動させなければいけませんし、運動が足らないと体力を持て余してストレスがかかることがあります。運動をさせる最も効果的な方法はボールを投げて回収させることです。レトリーバーの名のとおり喜んで持ってきます。ただし、なかにはボールがあまり好きでない犬もいます。その場合は自転車で引き運動を行うことが効果的ですが、技術が必要ですので徐々に慣れるようにする必要があります。また、子犬の時はあまり激しい運動は控えた方が骨格のためにはよいようです。
子犬の時
 ラブは盲導犬にもなる犬ですから、知識のない人は、あのおとなしい従順な犬をイメージするかもしれません。以前「ラブの贈り物」というテレビドラマが2年連続して放映されました。また、最近でも盲導犬をテーマにしたドラマがよく放映されたいます。人気が出たのはこのせいかもしれません。ドラマを見た人は特にそういうイメージを持っているのではないでしょうか。しかし、盲導犬は厳しい訓練を経て初めて完成するもので、ラブがすべて盲導犬のように振る舞うわけではありません。訓練されていない実際のラブの子犬は、特に暴れぶり、やんちゃさは大変なものです。もちろん人にかみついたりする攻撃的な暴れ方では全然ありませんが、まず、室内の柱や家具は傷だらけになることを覚悟して下さい。それがいやならそれなりに予めフェンスでバリケードをするなどの対策をしておく必要があります。もっとも、不思議なことに、1歳を過ぎればどういうわけか室内荒らしはぴたりと止みます。ラブは大人になるのに時間がかかり、2〜3歳以上にならないと本当は落ち着かないといわれています。いずれにしても、単におとなしそうとか人気があるとかという理由でラブを飼うと、こんなはずではなかったと後悔することになりますし、飼われた犬も不幸です。ラブ(いや犬すべてについて)を飼うことはひとつの命を預かることですから、中途半端な気持ちではあまり飼ってもらいたくないと思います。一度飼うことを決心したら死ぬまで責任を持って飼ってあげて下さい。しかし、このように大きな手間がかかるにもかかわらず、愛情を注げば、これほど楽しい犬はいないでしょう。まず間違いなく10年は楽しい生活が続きます。努力は必ず報われる−−それがラブの特長です。
食事
 ラブは食欲旺盛で食べることにどん欲ですので、食べ物はやればやるだけすべて平らげてしまいます。従って大変太りやすい体質です。また、人間が食べているといかにも欲しそうにしますが、これに負けてついやってしまうと、いつも催促されることになります。従って、心を鬼にしてやらないことが肝心です。間違ってもテーブルの上から食べ物をやってはいけません。やらないでいるとそのうちにねだらなくなります。一番犬の健康にいいのは、体に合った決まった質の良いドライドッグフードだけを食事としてあげることです。ドライドッグフードは犬の栄養と健康を考えて作ってあるので、基本的にはこれのみを所定量与えていることが一番望まれます。人間の食べ物をやりすぎると栄養のバランスが崩れてよくありません。特に塩分や当分のやりすぎは要注意です。毎日犬のために食事を作ってあげるというのは心温まる話ですが、犬と人とは必要な栄養素が異なるので、よほど注意して作らないと実際は犬の健康を害することになります。もちろんドッグフードだけというのは味気ない話ですので、時々果物や肉などの好物をあげるといいですし、犬も喜びます。
 なお、食事の回数は子犬の時は何回にも分けてやりますが、成犬では通常朝晩の2回です。1日1回でもいいのですが、胃への負担と食事の楽しみを多く与えるという意味で1日2回がいいでしょう。なお、ラブの体重は、その骨格の大きさから千差万別です。盲導犬になるようなラブは25kg程度ですが、骨格の太い犬は40kgにもなります。従って、一概に例えば「○○kgでなければいけない」などと頭から決めてかかってダイエットさせるのはいけません。あばら骨が手で触れるならそんなに太っていないですし、体重の値よりもその変化にむしろ注意すべきです。
 ラブのみではなく犬に絶対にやってはいけないのがネギ、タマネギ、ニンニクなどのネギ類です。人間には影響が少ないのですが、犬にとっては溶血作用が大きく危険です(ちなみに人間でもニンニクを食べ過ぎると貧血になります)。特にタマネギは、ハンバーグやいろんな肉料理に入っていますので注意する必要があります。また、牛乳やチョコレートも犬にとってはあまり良くありません。牛乳中の乳糖を犬は消化できず消化不良になります。チョコレートの中にはデオブロミンという犬にとって毒となるものが入っていて、食べすぎるとチョコレート中毒になります。おやつとしては、市販のガムなどが適当で、歯の掃除ためにも時々噛ませるのがいいそうですが、あまり胃に良くなく、やりすぎると吐いたりします。
その他
 ラブは短毛なのにきわめて暑さに弱いです。人間が少し暑いと感じる時にはもうすでにハアハアいっています。一番危険なのは、真夏の暑い昼間に散歩をさせることです。足をやけどしたり、車の中に放置して死んでしまったのも多いそうです。暑いときはあまり激しい運動もできませんので、散歩は朝晩の涼しいときにしてあげて下さい。もともと水猟犬であったため水が大好きなので、夏は時々水浴びをさせると大変喜びますし、一石二鳥です。一方、冬の寒さには強いのですが、寒さが好きというわけではありません。ほとんどの室内飼いのラブはストーブの前やふかふかの毛布や敷物の上が大好きです。室内飼いに慣れている犬は寒さを守るアンダーコートの毛があまり生えてこないそうですので、あまり温度が低いときには防寒対策(ペットヒーターなど)も必要です。また、ラブは抜け毛が比較的多いので、室内飼いの場合結構掃除に手間がかかります。足のためには絨毯がいいのですが、抜けた短毛が絨毯に突き刺さってなかなかとれません。
 ラブやゴールデンのような大型犬には、宿命ともいうべき「股関節形成不全」という病気があります。これは、生後5ヶ月くらい以降から発症し、ひどいときには痛みで歩けなくなる病気で、遺伝的因子がきわめて強く、繁殖をきちんと管理することによって防げるといわれています。事実、英米では犬の繁殖の管理やブリーダーがしっかりしているので、この病気はかなり少なくなってきていますが、日本のように急激に人気が出てきている場合そのようなことを考えないで繁殖していることが多く、かなりの犬がこの病気にかかっているか、因子を持っているといわれています。従って、ラブを飼う予定の人はこのことを十分に頭に入れ、間違いのないブリーダーの中から十分吟味して子犬を選ばれることをお勧めします。 事実、あまりきちんと管理が行き届いていないペットショップから衝動的に買ってこの病気に悩んでいる人が多いそうです。ただし、親犬がこの病気ではないからといって安心はできず、3代くらい前までたどってきちんと調べないと本当にこの病気が出ないとの保証はないといわれていますので、子犬選びにはある程度運もつきまといます。



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