taiiku_gakkai_2004

スポーツのためのストリーミング映像のデータフォーマット*1

○ 宮地 力(国立スポーツ科学センター)

1.はじめに

映像,動画像がコンピュータで処理出来るようになって久しい.しかし,通常の解析用の映像ファイルのサイズは大きく,1台のコンピュータで保持できる映像ファイルの量も限られている(例えばDVフォーマットの場合1分で230MB程度).そこで,映像の再生にストリーミングという,ユーザーのディスクスペースをほとんど使わない再生方法が使われるようになってきた.ストリーミングについての利点と欠点をまとめると以下のようである.

[ストリーミングの利点]

  1. ユーザーのパソコン上に映像ファイルを保持する必要がないため,ディスク容量を使わない.
  2. 映像は,常にサーバーから送られてきて再生されるだけなので,ユーザー側に映像のコピーが残らず,映像の著作権等を管理しやすい.

[ストリーミングの欠点]

  1. ネットワーク接続がないと映像が見えない.
  2. ネットワーク回線のデータ転送スピード,コンピュータのパワーに,画質が影響される.
  3. ストリーミング映像のフォーマットが,いくつか乱立状態にあり,1つに確定していない.

2.目的

ストリーミングによる映像の配信は,スポーツ映像のデータベース等を構築する際に,とても有効な方法の1つであると考えられる.しかし,ストリーミングの欠点である(2)の回線スピードの画質への影響は,スポーツ映像を見る場合に大きな問題となる.データ転送が間にあわない場合,スポーツ映像で重要な動きのなめらかさが失われてしまうことがあるからである.

そこで,本研究では,映像データベースを構築することを念頭に,一般的な3種類のストリーミング方式(WindowsMedia9, RealVideo, QuickTime Streaming)を取り上げ,その再生のスポーツ向けの映像としての質がそれぞれの映像フォーマット,その映像圧縮のパラメータ設定等によってどのように影響を受けるかを調査した.

3.映像ストリーミングの環境

ストリーミングの映像ファイルを作る際に,以下のように初期設定を決めた.

表1:ストリーミングファイルのための設定値
ビットレート1Mbit/sec
画面サイズ720×480
映像フォーマット各方式による

これらは,ADSLや光ファイバーによるネットワークの状況,スポーツに利用できる画面サイズなどを考慮した設定値であり,MPEG4の標準設定規格ISMA(Profile 1)をほぼ満足する設定である.

4.再生の結果

方式により得意不得意があり,どの設定がベストであるという結果は出せないが,現時点での再生の結果は,以下のようにまとめられる.

  1. 画質:MPEG4の場合,固定カメラ映像で背景があまり変化しなければ,何とか満足できる画質が得られた.ただし,これは圧縮に有利な状況であって,すべての場合にはあてはまらない.画像圧縮にSolenson Videoやシネパックを選んだ場合,圧縮効率がわるく,表1の設定値を満たすためには,画質の劣化がかなりあり,実用には耐えないと思えた.
  2. ポーズ指令への反応:WindowsMedia9, RealVideoは,ポーズ(一時停止)に対しての反応も速く,また,その後の再生もスタートもほぼ同じ時刻であった.QuickTime Streamingでは,ポーズ後の再生スタートが後ろにずれる傾向があった.
  3. 時間軸のスムーズさ:見た目の印象になるがRealVideoは,転送条件がきびしくなると映像が飛びやすい傾向にあり,QuickTime Streamingは,RealVideoに比べスムーズさが出ていた.

5.まとめ

ストリーミングによる映像の配信では,圧縮フォーマットの優劣が画質に影響を与える部分がおおきい.また,スポーツ映像の場合は,動きがはげしく,画面全体の像が変化するものも多い(例えばサッカー等). そこで,画面の内容にあわせて,圧縮率などを設定する必要があり,また,可変ビットレート等も検討する必要があろう.


*1 第55回日本体育学会抄録原稿

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