中年ダイバー日記

「ダイビングをやりたい」

と思ってしまった。
奥さんを説得し、なんとか許可をもらって、ショップの門をたたく。
もう、何年も前の話になります・・

・ダイビングを始める前

大昔話
子供の頃、海水浴でいろいろな生物に出会った。毎年家族全員で、三浦半島にある長浜海水浴場に通っていた。小さな砂浜で、両サイドが磯になっていた。当時は大きな砂浜と思っていたけど、子供にはそう見えただけだろう。ここで、シロウミウシ、アオウミウシ、ウミシダ、タツノオトシゴ、ソラスズメダイなんかに出会った。タツノオトシゴは感動したね。ウミシダもすごかった。この世の生物とは思えなかった。
 そういうわけで、海の生物にも強い関心があった。ただ、残念なことに私はろくに泳げなかった。25m泳ぐのがやっと。そのせいで、海からは遠ざかり、中学からは山歩きでチョウを追う日々になった。しかし、中3の時、チョウを追って貧乏旅行で出かけた沖永良部島(鹿児島県)で、珊瑚礁との衝撃の出会いする。その後、チョウからカエルに対象が変わっても通い続けた南西諸島で、時々サンゴの浅い海で泳いでは、綺麗な海に感動していた。

昔話
 就職・結婚し、転勤した九州で、山があまりに暑くて行く気にならず、海に自然足が向いた。その頃、マリンダイビングの別冊で、「スノーケリング入門」という本が出て、これだ、と思った。当時はフィンなんて田舎ではなかなか売っていなくて、雑誌からダイビングショップを探して、そこで3点セットを購入した。
 これがはまったね。奥さん共々。天草下島の海は場所によって様々な生物や景観があり、スノーケルで十分楽しめる。ダイビングの練習場所にもなっている妙見浦は左側の浜からエントリーすると沖合の岩にトゲトサカが生えているのが見えるし、手前にはユビノウトサカみたいなソフトコーラル。右側の浜からエントリーすると、イバラカンザシがたくさんいる岩がある。深場には青白い、グッピーみたいな尾をした魚がいた。しかもそれが逃げ込んだ穴には、別のシマシマのハゼがいる。ハナハゼやダテハゼとの初めての出会いだった。さらに沖に行くと小魚の幼魚の大群がいて、今思えばハタンポの仲間かな。潜っていくと小魚のトンネルの中を泳ぐようだった。また、左右の浜をつなぐ洞窟があって、スノーケルで通過できる。暗い洞窟には、イイジマフクロウニがいて、不気味な感じだった。
 妙見浦で泳いだ後は、近くの国民宿舎で風呂だけあびて帰る。この国民宿舎前の磯も泳いだが、あまり良い印象はない。
 牛深の少し手前にある茂串浜はずっと浅くて明るい、美しい浜だった。ここはチョウチョウウオ、チョウハン、コロダイの幼魚、ハタタテダイ、ツノダシなど、すごくカラフルな魚が多かった。タコ、ウツボも多かった。子供たちがよくタコを捕って遊んでいた。潮だまりにいたアオヤガラに仰天したのも懐かしい。ポリプを広げるタイプのソフトコーラル、それにキクメイシも多く、珊瑚礁まであと一息といったところ。着替える場所や水もないので、すべて持参していった。きっと今ではもっと開発されているのではないかな。
 しかし、そのころ、同じ九州の海岸で拉致事件が発生していた。また、天草で船上から泳いでいた女の子がサメに襲われる事件もあった。私たちは楽しいだけだったけど、怖い気もする。
 ところで、スノーケリングを楽しんでいるうちに泳げるようになっていた。泳げないのって、水に対する恐怖心が大きかったんだなって思う。それに「泳げないんだ」って思う気持ちが泳げなくさせていたのかも。

海外
 ふたたび関東に戻り、小さい子連れで夏は海外に行くようになった。子供が12才までは子供半額というツアーが結構あるので利用した。ロタ島では、テテト・ビーチという美しい砂浜で、ソーセージで餌付けすると熱帯魚が集まってくる。それを見て興奮した6才の子供は、いつのまにかスノーケルで泳ぎまくっていた。それまで、水を怖がって全然泳げなかったのに。さらに、水深30m以上あるコーラルガーデンへもボートででかけたが、そんな深いところでもライフジャケットをつけて水面でスノーケリングできるようになっていた。

 ロタに味をしめて、翌年はついにあこがれの南太平洋、フィジーはマナ島へ。ここは「遠い海から来たクー」の舞台でもある。クーのビデオを見て、いざ、出発。マナはマジックアイランドというくらいで、とにかく魚が多かった。うじゃうじゃいた。
 ここで、とうとう私はある決断をした。「体験ダイビング」をしたくなってきたのだ。というのも、浜で泳いでいると体験ダイビングらしい人が、ガイドに引きずられるようにして深みからあがってくるのを何度も目撃したからだ。「あれならやれそうだ。」
 ダイビングは怖いからやらないと宣言している奥さんは、私一人で行きたいとの話に不機嫌となったが、「半日だけ」と、なんとか拝み倒し、マナのショップ「アクアトレック」の門をたたく。同じく体験ダイビングを申し込んでいる女性二人と「講習」なるものを受ける。講習? 恥ずかしながら、体験ダイビングでも講習をするっていうのは知らなかった。ただ、ガイドに引っ張られているだけかと思っていた。いや、講習はまじめで、講義だけじゃなく実技もあって、しかも一人一人できるまでやる。フィジアンのインストラクター(ガイドって言うんじゃないんだね)で言葉は英語まじりの日本語だったけど、指導は丁寧だった。うん、これなら安心かな。
 初めての体験ダイビングはそれはそれは楽しかった。水中で息ができるということがこれほど楽しいとは。初めてゆっくり魚を見た。しかも上からではなく横から!しかし、次があった。講習を受けた人は、次はボートで潜らせてくれると言うのだ。次! その晩、もう一度奥さんにお願いしてあと一回潜らせてもらえることになった。
 初ボートはさらに衝撃だった。磯もなにもないただの海にボートは泊まる。えっ、こんな海の真ん中で潜るの?と思っていると、いきなりバックでエントリーを指示される。インストラクター2人のうち一人が先に飛び込んで待っている。二人の女性も最初は嫌なのか不安げにこちらを見る。しょうがない、ままよ、ってわけで飛び込むと、一瞬目の前が泡で覆われ、どきどきする。でも呼吸できる!ので落ち着くと、澄み切った海底が美しい!ロープにつかまりながら耳抜きをして潜っていくと10mほどの海底についた。ツバメウオが遊びに来るし、小さいナポレオンもいるし、実に楽しかった。実はこのときまで、耳抜きができないだろうと漠然と不安を感じていた。スノーケリングでジャックナイフで潜っても、3mあたりで耳が痛くなり、一回はなんとか抜けてももう息切れで、5mくらいまでしか潜れないのだ。だから、ダイビングなんて無理・・と思っていた。けれども、ダイビングではゆっくり潜れるのだ。そうしたら、耳なんて簡単に抜けた。いや、それほど簡単ではなかったが、ともかく抜けた。じゃ、もうためらう理由なんてないじゃん。子供も大きくなったし、40半ばだし、今を逃すともう人生にチャンスはないかも。
 砂利と草むらでできた飛行場の脇の小屋(っていったら失礼か)のような待合室で帰りの飛行機を待つ間に、一緒に潜った先輩ダイバーにいろいろ話を聞く。楽しそうな話、知らない人同士が話が弾むダイバーの世界が、ずいぶんよさそうに見えた。よし、帰ったらダイビングのライセンスを取ろう!と思ったのでした。まだ、Cカードって言葉も知らなかった。

・Cカードを取るまで