ソルベチエール
Sorbetiere
アイスクリーム製造器。イタリアCIMAC製。フリージング機能と攪拌機能付き。
子供の頃から自家製のアイスクリームは憧れだった。
製氷皿(古い!)で固めて、半かたまりのところを何度も混ぜて空気を含ませる。少しじゃりじゃりしたアイスクリーム。
その味を知る私にとって攪拌凍結したアイスクリームは夢のような世界だった。
私の祖父は若い頃アメリカで仕事をしていて、実家にはなんだか訳のわからない「舶来」のものが色々あった。
超アンチークな電気ひげ剃り、クリスタルの香水瓶、ロイヤルドルトンの壺等々。 アメリカから持ち帰ったという鏡台の抽斗は私には宝物の山だった。
ある時、料理雑誌にアイスクリームの作り方が載っていて、製氷皿で固めるとある。それを見た父が、昔この家でアイスクリームを作ったことがあると言う。それは「本物」のアイスクリームで、周りに氷と塩を入れて固めたのだという。今も地下室にその「機械」があるかもしれない、というので探しに行った。(何故か私の生家には地下室があった)しかし見つかったのはぼろぼろに崩れた元は樽であったとおぼしき物体と、錆びてほぼ原型を留めていないブリキのカンの残骸だった。
自分で「本物」のアイスクリームを作るという野望をうち砕かれた私は後年、MORA(パリにある料理用具専門店)の店でついにソルベチエールと出会う。プラスチック製のバケツの中にステンレスの円筒形のカンが入っていて、その中に羽根があり、モーターで円筒形のカンが回って攪拌凍結させるというものだ。プラスチックのバケツと円筒のカンの間には塩と氷を入れる。
しかし日本は100V、フランスは220V。そこで日本に持ち帰った私はなんだかこの世のものとは思えないほど重い変圧器を買って、それにつないでアイスクリームを作ることにした。差し込んだプラグからは青い火花が散るし、時々氷と塩は弾けて飛び散るし、モーターは喧しいし・・・それでも私は果敢に作り続けた。
当時私からアイスクリームの作り方を伝授された生徒が述懐するに、「あれほどアイスクリームが大変だとは思いませんでした」だそうだ。
で、まあ、アイスクリーム作りは仕事のためと言うよりは楽しみのため、時々大騒ぎして作るイベントとなっていったのだが、ある日、突然、氷と塩を使わなくても出来るアイスクリームの機械が欲しくなった。その欲求は突然何の脈絡も、予告もなく訪れた。そして買ったのが写真の機械。液体で1リットルくらいのものを固めることの出来る業務用の最小の機械だ。
追記:アメリカの通販のシアーズで一時期、塩と氷で作るタイプの機械を販売していた。今もあるかどうかわからないが、フランス製よりずいぶん使いやすかった。
追記2:比較的安価で実用的なものとしてはデロンギのアイスクリーマーがある。原理は「どんびえ」と同じで保冷剤の部分を冷凍庫で8時間以上凍らせておくタイプ。冷凍庫のスペースに余裕があれば、これもいいかもしれない。
追記3 :「本物」のアイスクリームを自宅で作るというのは私一人の夢ではなかったようだ。ある情報によると、冷凍冷蔵庫を買ったときにアイスクリーマーがついていたというのだ。三菱らしい。金属のカンにモーターのついた蓋と羽根がついていて、それを冷凍庫の中に入れて、攪拌凍結するもの。
追記4:お菓子のレッスンで粉のソルベチエールを使うともう少し手頃なものはないかという質問を良く受ける。調べてみると最近ではかなり色々出ているようだ。