クレメ・ダンジェ

Larousse des fromages によると

Cremet(Anjou)
牛、山羊。伝統的なアンジェ風のクレメは元々は山羊の乳から作られていたという説がある。現在ではエクレメ(乳脂肪を取り除いていない)していない牛の乳から作られている。塩やシブレット、砂糖と共に食べる。Angers風のものが最高。

クレメ・ダンジェのルセット
125gのクレーム・フレッシュ(creme fraiche)を泡立てる。卵白1個を泡立てる。静かによく混ぜ、型に入れる。布で包んで涼しいところで水気を切る。サービスするときにはクレメをコンポートに出し、泡立てていないクレーム・フレッシュにバニラシュガーを加えたものをかける。

他の地方ではもっぱら、クレメは濃いクレーム・フレッシュに凝乳酵素レンニンを加えて混ぜて作られている。

 ということなのだが、これでクレメ・ダンジェの輪郭がわかるだろうか。
 ロワール地方の特産のフレッシュチーズというのは確かなようだ。

 私がこのデザートの存在を知ったのはたぶん、80年代、当時日本で活躍していたフランス人パティシエ、セルジュ・フリボーの記事である。ムックだったと記憶しているが、当時フリボーがやっていた「メゾン・ド・フランス・セルジュ」(セルジュ・フリボーの帰国により閉店)の紹介で、彼がおばあちゃん(お母さんだったか?)の思い出のデザートとして書いていた。白いふわふわした固まりがガーゼに包まれていて、いったいどんな味がするのだろう、と思ったものだ。作り方はひ・み・つ、なんて書いていたし。残念ながらそのムックはいくら探しても出てこないのだが、そのデザートは夢の中での出来事のように私の記憶の中に残っていた。
 その後、初めてそれらしきものを口にしたのは東京の「ル・マンジュ・トゥー」というレストランだった。たった一度行っただけだが、非常にファミリアルな店で、そこそこの値段で勢いのある料理を食べさせてくれた。そこで私はこのデザートを選んだ。確か、メインにオマールのポシェかなんかを食べたあとだったのだが、満腹でもう何も入らないというときに舌にも胃にも忍び寄るようにとけ込んだこのデザートの味は忘れられない。
 このデザートは私にとってなんだか幻めいたものであった時代が長くつづいたのだが、何故か最近ではデパ地下でも手に入る。いや、別に怒っているわけではない(笑)

 フロマージュ・ブランに生クリームと卵白の泡立てを加えて、水気を切る。
 好みのソースと共に供する、という単純なものだ。
 日本語のテキストではいくつか、ルセットを見つけることが出来たのだが、フランスの原典で見つからない。特に、フロマージュ・ブランを使ったルセットが。
 例えばcreme bruleeをgoogleで検索すると42800件検索される。cremets d'angersでは3件が挙がるのみでそれも菓子関係ではない。末尾のs や前置詞を抜いてcremet angerで検索するとやっと一つ菓子関係が挙がり、ルセットもあった。
 
 この結果に私は愕然とし、私が「クレメ・ダンジェ」と長年信じ続けて来たフランスのデザートは日本に存在するのみで、フランスにはないのではないかと疑うまでに至った。そこでフランス語とフランス菓子に詳しい友人複数に問い合わせたら、 Cremets d'Angersは存在するというこころ強い返事。
 日本人が良く知っていてフランス人が知らない、そんな事ってあるのだろうか。しばしば、あるのだ。
 で、存在すると信じて調べたら手持ちのラルースのチーズ辞典にあった。でも、フロマージュ・ブラン、使ってないんだよな。ま、美味しければ何でもいっか。別にこのデザート、クレメ・ダンジェという名前でなくても良いような気がしてきた。

2003/06/16

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